■AIを使う際のポイント
研究員:こんにちは。本日はよろしくお願いします。早速ですがChatGPTを使ってチョコレートにあうペアリングを見つけたいと思います。ChatGPTを活用するときの留意すべきポイントはありますか?
左:(株)メリーチョコレートカムパニー マーケティング本部研究開発課 奥谷ショコラティエール
右:日本大学 文理学部 情報科学科 大澤 正彦准教授
大澤准教授(以下大澤): ChatGPTは便利ですが、ChatGPTが実際の味について詳しいわけではないので、今回のペアリングの場合、正解を出すというよりは提案をもらうという程度で捉えていただいた方がいいと思います。本当に美味しいかどうかは、人間が確かめる必要がありそうです。
メリー研究員(以下研究員):そうなんですね。それであれば、こちらにファンシーチョコレートを用意しましたので、ChatGPTが提案したマリアージュを私たちで実際に試食しながら進めていきましょう。事前にChatGPTに質問したファンシーチョコレートの粒ごとの説明文画面はこちらです。
研究員:下記の面白い提案が出てきました。今回はこの中から5粒実験したいと思います。
ChatGPTに質問して出てきた画面。この中からご家庭でも真似しやすい飲み物を実験します。
<今回試すチョコレートと飲み物の組み合わせ>
1キャラメルチョコレート ダークビール(スタウト)
2ミルクティーチョコレート スコッチウィスキー
3宇治抹茶 白ワイン(シャルドネ)
4ストロベリーチョコレート ロゼワイン
5クリスプ アイスカフェオレ
■ChatGPTの回答をもとにした実食レポート
研究員:まずは黒ビールとキャラメルチョコレートです。
大澤:はじめての感覚で美味しいです!意外にも無難というよりは新鮮な回答をChatGPTが出したことにも驚きましたが、キャラメルの味がしっかりしているからビールにも負けない美味しさです。
奥谷:黒ビールの苦みが抑えられて美味しくいただけます。口溶けを良くするためにビールは冷やしすぎない方がいいですね。
研究員:次はスコッチウイスキーとミルクティーチョコレートです。
大澤:これは組み合わせが合わないバラバラな印象がします。
奥谷:そうですねえ。。もしかしたらウイスキーの種類によっては合うかもしれません。例えばシェリーカスク漬けのウイスキーにすると合うと思います。また逆にチョコレートがプレーンチョコレートであれば合うと思います。私のおすすめとしてはダージリンティーのようなフレーバーティーでもいいかなと思います。私のおすすめのマリアージュもご用意したので、試してみてください。
大澤:なるほど。そうですね、実際に飲み比べてみると、フレーバーティーの方がお互いの香りが溶け込んで心地よいように感じます。
研究員:続いて白ワインと宇治抹茶です。シャルドネのフレッシュさが抹茶の渋さに合うのではないかとのことです。
大澤:「・・・あまり私は好きではないです。」
奥谷:ワインの渋さが強調されてしまっていますね。もう少し甘口のデザートワインだと合う気がしますね。あとはホットミルクも抹茶ラテのような感じで合いそうです。
研究員:次はロゼワインとストロベリーチョコレートです。苺の甘酸っぱさにはフルーティーさが合うそうです。
奥谷:こちらも渋みが引き立ってしまっています。スパークリングということもあるかもしれませんが、ストロベリーの良さが消えてしまっていますね。同じワインの中でも種類があります。
こちらはダージリンティーなどを合わせるとロシアンティーのような感じになってあうと思います。
研究員:最後にアイスカフェオレにクリスプチョコレートです。モルトパフの軽やかさにカフェオレのコクが合うとのことです。
大澤:これはとてもマッチしていると思います!ただChatGPTが説明している「モルトパフの軽やかさにカフェオレのコクが合う」という理由でおいしいわけではない気がしますが、別の意味で美味しいです。
奥谷:そうですね。カフェオレのすっきりした味わいがモルトパフに合うというところでしょうか。
■全体を振り返って
研究員:全体を振り返っていかがでしたか?
大澤:AIとショコラティエの力を合わせてみると面白い答えが出るかもしれないですね。ショコラティエールの奥谷さんが試してみてコメントをしているところが参考になると思いました。専門的な知識とAIの力が組み合わさると面白いチョコレートの愉しみ方が生まれそうな気がします。ショコラティエが沢山得てきた経験の中で得られた直感はまだAIにはない分野ですね。
研究員:なかなか、AIの出した答えが正解というわけでもないのですね。
大澤:組み合わせを提案してくれたChatGPTに感想を伝えて新たな提案をもらってみてもいいかもしれませんね。たとえば「黒ビールとビターチョコレートが合うと思ったのですが」みたいに自分が気に入った組み合わせを例として質問してみてもいいかもしれません。
■今回学んだこと
・AIの技術とショコラティエの専門性を合わせることで新たなチョコレートの愉しみが生み出せる可能性は高まる。
・ChatGPTの出力のみに答えを求めずに提案をしてもらう関わり方が良さそう。質問の仕方を具体的にすることで求めるものが得られやすい。
日本大学文理学部情報科学科准教授、次世代社会研究センター(RINGS)センター長。博士(工学)。東京工業大学附属科学技術高等学校情報・コンピュータサイエンス分野、慶應義塾大学理工学部情報科学科をいずれも首席で卒業。2017年慶応義塾大学大学院理工学研究科後期博士課程修了。学部時代に設立した人工知能コミュニティ「全脳アーキテクチャ若手の会」は2500人規模に成長。IEEE Young Researcher Award (2015年)をはじめ受賞歴多数。グローバルな活躍が期待される若きイノベーターとして「Forbes JAPAN 30 UNDER 30」2022に選出。著書に『ドラえもんを本気でつくる』『じぶんの話をしよう。- 成功を引き寄せる自己紹介の教科書』(いずれもPHP研究所)。